深海磁力計

海での磁場測定

 海上での科学的な磁気測定が本格的にはじまったのは1950年代です。船から磁力計を曳航して地球磁場を測ると、おおよそ30,000~40,000ナノテスラの強さがあります。このほとんどは、液体の金属である外核がつくる磁場です。この磁場は地球内部に棒磁石を置いたような双極子磁場に非常に近い形をしていて、地球上のどの場所でどれくらいになるかが国際地球標準磁場としてモデル化されています。実際に磁場を計測してこの標準磁場モデルの値とくらべると、場所によって数百ナノテスラ程度の差があり、これを磁気異常と呼びます。海域での磁気異常の最大の原因は、海洋性地殻を構成する玄武岩の残留磁化で、海底が新しくできた=溶岩が冷え固まった時に、その当時の地球磁場の方向を岩石中の磁化鉱物が記憶しているものです。海域の磁気異常観測によって、中央海嶺に平行な縞状の磁気異常がみつかったことが、海底拡大説を生み、プレートテクトニクスの成立につながりました。

図1

深海での磁場測定

 磁気異常の源は海底です。船から計測するということは磁化物体から数kmも離れたところから測ることになり、磁気異常は比較的小さくかつ短い波長の異常をとらえることができません。より詳細に海底の磁化の様子を知るためには、磁化物体すなわち海底の近くで計測を行う必要があります。私達は、深海で磁気計測をするためのシステムを開発し、海底のテクトニクスや熱水活動による磁化の変化などについて研究しています。図1にあるのは、深海曳航式のプロトン磁力計です。船からワイヤーや同軸ケーブルで海底近くを曳航します。磁力計そのものは陸上や海上で使われているセンサーと同じで、おもりをつけて深く沈めているだけです。これは計測そのものは安定していてデータ処理も比較的容易ですが、安定して曳航することが難しく、また全磁力しかわかりません。図2にあるのは、「深海ミニ子」と名付けた潜水船接続型の磁力計です。この磁力計は3成分計測できて、本来のベクトル場を知ることができます。ただし、潜水船は金属を使っていたりプロペラが動いたりするので、潜水船がつくる磁場を補正する必要があり、解析にはかなり工夫がいります。図3は、AUV(自律航行型の探査機)にやはり磁力計をとりつけているところで、AUVは比較的自身の磁場が小さめで走行が安定しているので、これから多いに利用していこうと考えています。

図2

図3


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