サンゴを用いた古海洋環境復元


去る2009年6月、鹿児島県喜界島。岸からさほど離れていない沖合で、巨大なハマサンゴ群集を発見しました。水中コアリングにより、長さ4.5mのコア(柱状試料)を採取する事に成功し、サンゴが刻む年輪を数えたところ、過去400年以上にわたって成長してきたことがわかりました。この骨格を化学分析すれば、16世紀から現在までの海水温や塩分の変化を復元することができます。国内最長、世界的に見ても第2位の長尺記録を持つハマサンゴを採取することができました。


現在進行中の地球温暖化。そのメカニズムに迫るため、環境省の地球環境研究総合推進費と日本学術振興会の研究プロジェクトの一環で、温暖化予測モデルとサンゴ骨格の化学分析結果を用いた“古気候”の研究を行っています。耳慣れない言葉であるが、この“古気候”という研究分野は、過去の気候がどうであったか正確に復元し、変動メカニズムについて理解しようとするものです。近年の計算機資源の発展や機器分析精度の向上にともなって、急速に発展しています。ノーベル平和賞も受賞したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)によって、2007年に発表された第4次報告書では、古気候の章が独立して設定され、第6章は第一作業部会報告書の中で最も長い章となりました。

レーザーアブレーション・誘導結合プラズマ質量分析装置
(LA-ICP-MS)
将来の気候変動を予測するためになぜ過去を知ろうとするのでしょう。高性能気候モデルによって、極めて細かいスケールでの変動についての理解が深まってきています。しかし将来予測の精度は未だ高いとはいえません。それは、モデルの詳細を改良するためのデータを得ることができないからです。そこで登場するのが、サンゴ骨格を化学分析して復元される古気候データです。過去に起こった気候現象を復元し、モデルでも当時の“予測”をすることで、いわば答え合わせを行います。どの程度、どの部分にズレが生じているかをより定量的に比較検討することにより、モデルの動作特性を理解して、将来予測に生かしていきます。
 現在、オーストラリア国立大学と共同で、レーザーをつかった微量金属測定などにより、江戸時代まで遡った気温や水温復元を行っています。