NSS システム

 海洋における堆積物・海水・生物の採取や海流・塩分濃度などの現場での物理・化学観測は,調査船からケーブルによって吊り下げられた機器によって行われる.このため深海ではピンポイントでの試料採取・観測は容易ではない.船上から機器の正確な位置を知り,操船によって目標点に近づくため,最近では音響測位用の送受波器を観測機器の直上に取り付けることがある.東京大学海洋研究所では,このような音響測位に加え,4つのスラスターによる航走,ビデオカメラによる海底観察,船からの信号による各種機器の切り離し,搭載機器によるリアルタイム観測を可能とするNSS(Navigable Sampling System:自航式深海底サンプル採取およびデータ管理システム)を平成14年度に設計・製作した(三井造船社製).このシステムは,大きく分けると,パイロットビークル・ケーブル・船上機器からなる.パイロットビークルは,ペイロード切り離し装置・海底観察および切り離し監視カメラ・スラスター4機・高度計・深度計,さらにペイロード用電源およびデータ通信コネクタを装備している.最大稼働水深は4000mで,1.5トンまでの観測機器を切り離すことができる.観測機器としては,ピストンコアラー・マルチプルコアラー・ヒートフロー測定装置・CTD・採水器・海底地震計・海底電位差計・海底測位計・ガンマ線測定装置などが挙げられる.ケーブルは,鋼線鎧装電気光複合ケーブルで,長さは5000mである.船上機器は,ヒーブコンペンセーター・トラクションウインチ・ケーブルウインチ,それらを作動させるための油圧・エアコンプレッサー・発電機,さらにビークルの制御用コンテナからなる.本システムは可搬式であるので,十分な甲板スペースのある船舶であれば搭載可能である.

パイロットビークル

NSSを用いた活断層周辺でのピストンコア採泥

船上配置図
揚収ムービー
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運搬