InterRidge Meeting “Circum-Antarctic Ridges” 参加報告

産業総合技術研究所 佐藤太一


南極を取り囲む中央海嶺系は気象条件等の難しさから他の海嶺に比べて調査が進んでいないが,約1億2千万年前に始まるゴンドワナ大陸の分裂から現在までのプレートテクトニクス,熱水フィールドの生物の多様性,海底資源調査といったテーマを考えるうえで重要な海域である.

2011年9月28-30日にフランス・トゥールーズで開催された環南極ワークショップに参加・発表を行った.イギリス・アメリカ・フランス・イタリア・韓国・インド・中国・日本の8か国から計42人の参加となった.日本からの参加者はJAMSTEC熊谷,専修大佐藤,極地研野木(敬称略),私の計4人であった.ワークショップではこれまでの環南極に関する研究発表,今後の各国の航海計画,次期インターリッジでのワークグループ立ち上げに関する議論がおこなわれた.

内容は大きく地質・地物と生物分野に分かれていた.地質・地物分野からは南西インド洋海嶺・南東インド洋海嶺・太平洋-南極海嶺・チリライズの発表が行われ,環南極海嶺では拡大軸に沿ってマグマ生産に非常にバリエーション豊富で,かつ時間変化もあることやホットスポットとの相互作用の可能性が指摘された.生物分野からは,南西インド洋海嶺,東スコチア海,ケルゲレン島で熱水フィールドの発見と調査報告がなされた.

 議論では今後調査すべき課題を挙げられた.特に地質・地物分野では,環南極海嶺の地形・地球物理学的・岩石学的多様性を理解するには,拡大速度だけでなく,マントルの温度と組成とその溶融プロセスおよびそのスケールを理解することが重要だと結論した.

加えて,環南極海嶺を研究するに当たり,データ・試料・航海情報の共有と航海への乗船参加が提案された.最後に次期インターリッジでの環南極ワークグループの立ち上げを提案し,情報共有とアウトリーチの方法について議論が行われた.

環南極はアクセスが難しいために,国際的に調査を行ってゆくべきだが,例えば生物分野では熱水フィールドなどで移動せずに調査を実施したいが,地物・岩石分野では移動してマッピングしながら調査を実施したいとの分野によって調査方法に違いがある.この点に関して議論がなされたが答えは出ず,いかに戦略的に調査を行ってゆくかの課題が残された.