ECORD Summer School 2009, Geodynamics of mid-ocean ridges
Bremen University

大気海洋研究所 佐藤太一

新学術領域「海底下の大河」の支援を受けて、2009年8月31日から9月11日に、ドイツ・ブレーメン大学のMARUMで行われたECORD Summer School 2009, Geodynamics of mid-ocean ridgesに参加した。参加者は計32人で、多くはヨーロッパからの岩石学(物理・化学)を専攻する博士課程学生であった。出身大学は様々で、各大学から1人での参加が多かったようだ。日本からの参加者は私のみであった。

2週間にわたり、久しぶりの講義に参加してきたわけであるが、夏の学校は、中央海嶺研究の講義、地質巡検、実際のコアサンプルをみながらの講義&討論という3セクションで構成されていた。また学生の研究発表も同時におこなわれた。

講義は中央海嶺の形成過程の力学的・化学的特徴から、熱水噴出域と海嶺のリンケージなど、多岐に渡っていたが、海洋コアコンプレックスとデタッチメント断層・熱水噴出域のレビューに偏っていたように思える。これは最終的には掘削にからめたいので仕方ない気もする。当たり前だが講義は英語で行われるので、やはり聞き取りは難しい。英語が母国語ではない地域であるため、若干聞き取りやすいものだったかもしれないが、自分の英語力不足を痛感する。地球物理的な研究に関しては、自分の知識と合わせてなんとか理解でき、自分にとってはそれほど新しい情報があるというわけではなかった。一方、地球化学に関してはその方面の知識の少ない自分にとって非常に難を感じるものだった。とはいえ、Donna Blackman博士、Benoit Ildefonse博士、Catherine Mevel博士などの有名な先生方から中央海嶺の研究をまとめて聴講できたことには意味があった。

地質巡検とコアサンプルを使用した講義&討論に関しては、正直なところ露頭を歩いた経験と岩石学の知識もほとんどない私にはかなり大変であった。実際に岩石コア記載、薄片観察、古地磁気方位の測定を行った。周りの学生たちに逐一尋ねながら、なんとかこなしたものの、完全に理解できたかといえば自信はない。

全体として、掘削コアをどう処理するかに特化した講義であったため、中央海嶺のダイナミクスといっても岩石学がメインであったことは否めない。岩石学の知識があればもっと楽しめたに違いない。また、ロギングデータの解釈などの物理探査系の実習があってもよかったと思う。

中央海嶺は地理的に日本の周りにはないため、いずれは海外の研究者との情報交換・共同研究の必要性が生じるはずである。この夏の学校は海外の研究者・同世代の学生達に自身を認識してもらう足がかりとして、加えて英語を学ぶ機会として最適な集会である。中央海嶺を研究していて、外国人と交流したい学生は機会があれば臆せずどんどん参加することを勧める。

最後に、今回の夏の学校への参加の機会を与えてくださった海洋研究所の沖野郷子准教授に感謝を申し上げる。

ありがとうございました