1. 航海情報

● 航海番号             :NT08-13
● 船舶名                :なつしま
● 航海名称              :青汁航海
● 研究課題名        :鳩間海丘で見つかった「青い熱水」の現場再現実験
● 航海期間             :2008年7月6日〜12日
● 出港地~帰港地            :石垣港~石垣港
● 調査海域名        :沖縄トラフ

2. 研究グループ

● 首席研究者                    :土岐 知弘(琉球大学)
● 課題代表研究者              :土岐 知弘(琉球大学)

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3. 実施内容

● 背景・目的

2006年8月の調査で、かつて巨大チムニーが存在していた場所から約20 m北に存在しているグスクサイトと呼ばれるクリアスモーカーにおいて、世界で初めて「青い熱水」が観測された。これを受けて2007年3月に「青い熱水」の形成メカニズムを明らかにするために、「しんかい6500」による緊急調査が実施された。2007年3月の航海においては、2006年8月に観測されたような「青い熱水」は確認できなかった。

熱水中に豊富に含まれる二酸化炭素は、現場の噴出温度と圧力(それぞれ320 ℃,150 気圧)において超臨界状態で存在する。超臨界二酸化炭素はレイリー散乱を生じることが室内実験と理論的には知られている。様々な散乱角に対する可視光の各波長域について散乱強度を理論式に基づいて算出したところ、鳩間熱水において光源に対して90°にいる観測者には青色の波長域が卓越して観測されることが明らかとなった。2006年8月の航海では、「しんかい6500」を「ハイパードルフィン3K」が撮影するという従来の潜航調査では行われなかった特殊な照明環境が「青い熱水」を形成したと考えられる。

このことを踏まえて、以下の項目を実施する。

(1)現場において様々な角度から光を当て、深海カメラを用いて観測する。

(2)これまで「青い熱水」が観測されてこなかったことから、以前の熱水活動との違いを比較検討する。

(3)複数の噴出孔において、それぞれの熱水組成と青い熱水の形成条件との関係を検証するために、カメラ観測及び熱水採取を行う。

(4)熱水の化学組成と微生物生態系の関係を検証するための微生物試料採取も行う。

(5)チムニーの化学組成及び年代解析を通して熱水の化学組成の変遷を探る。

● 実施項目

①投光機を用いた「青い熱水」の現場再現実験

②真空採水器・保圧式採水器・バッグ採水器を用いた熱水活動域における熱水の採取

③熱水活動域におけるチムニーの採取

④スラープガン・単式キャニスターを用いた化学合成生物の採集

⑤ニスキン採水器を用いた熱水活動域周辺における深層水の採取

● 手法・観測機器

再現実験用投光機(サーチライト及びLEDライト)

高井式真空採水器

保圧採水器

4連バッグ採水器

現場大量濾過装置

ゴカイ幼生採集用現場飼育装置

● 観測結果・実施結果

 本航海では大きく分けて二つの温度帯の熱水噴出孔をおとずれた。グスクサイト(C-1、C-2、C-3、189-1)及びオリトリサイトといったカルデラ中央部に位置する300℃前後の高温熱水噴出孔と、カルデラ西部に分布する200℃以下の中温熱水噴出孔(チュラサイト)。また、ライトは強力なサーチライトと微弱なLEDライトの二種類を用いた。サーチライトは普段はハイパーのおでこに取り付けられているが、前半(第866〜870潜航)においては、特別に右腕に取り付けて熱水を様々な確度から照らして観察した。ただし、ライトが強力すぎるために、カメラに写るとカメラが壊れる危険があったので、180°側から照らした透過光の観察に適さなかった。

LEDライトに関しては、普段はCCDカメラとして用いているが、後半(第871〜873潜航)において、右腕に備え付けて熱水を照らした。180°側からの透過光観察を行うと共に、合わせて光量を落とすことによって光路長を長くする効果を検証した。