提出日:2011年11月28日

クルーズサマリー

1.航海情報

1) 航海番号:NT11-20

2) 船舶名:なつしま/ハイパードルフィン3000

3) 航海名称:沖縄トラフ熱水域巡業航海

4) 首席研究者:石橋純一郎[九州大学],次席研究者:渡部裕美[JAMSTEC]

  乗船研究者:高橋幸愛,小倉知美,山本正浩,和辻智郎,野崎達生[JAMSTEC],矢萩拓也,

  鈴木庸平,宮崎ゆかり[東京大学],三宅裕志[北里大学],佐藤文寛[岡山理科大学],

  西林佑真[熊本大学],大西雄二[岡山大学],中村雅子[沖縄科学技術研究基盤整備機構]

5) 課題代表研究者:石橋純一郎[九州大学]

  研究課題名:沖縄トラフにおける熱水活動および熱水域生物群集の歴史の復元(S11-60)

6) 航海期間:2011年9月29日(那覇)〜10月12日(那覇)

7) 調査海域名:沖縄トラフ

  航跡および潜航地点を下図に示した。


図1 NT11-20航海の航跡および潜航地点

2. 実施内容(調査概要)

 本調査航海では、沖縄トラフでこれまで発見されている熱水活動域を対象として、ハイパードルフィンによる潜航調査を南奄西海丘(28°23.5'N, 127°38.5'E),伊是名海穴(27°15.0'N, 127°04.0'E), 八重山海丘(伊良部海丘)(25°14.0'N, 124°52.5'E), 鳩間海丘(24°51.5'N, 123°50.5'E),与論海丘(27°29.3'N, 127°32.0'E)で行った。潜航調査では、定量方形枠を用いた生物試料の系統的な採取をスラープガンにより行った。さらに生物採取を行う直前に同じ場所から熱水環境試料を種々の採水器を用いて採取するとともに、熱水化学環境のより精細な把握のために現場電気化学計測システムなどによる測定を行った。この他に岩石・鉱石試料50個、堆積物試料2個の地質試料採取を行った。また、第1330潜航ではADCPの設置を行った。

 これらの採取試料をもとに以下の研究を展開する計画である。

 生物試料については、各熱水域の生物群集の類似性に関する統計学的手法による解析、熱水域固有生物種についての分子系統学的解析を行う。合わせて熱水域間の種の分散を担うと考えられる幼生について、その生態や分散過程の検討を進める。これらの解析結果をもとにして、各熱水域に現在分布しているそれぞれの種の集団間の遺伝的交流の程度や方向を評価する。

 地質試料(鉱石、岩石、堆積物試料)については、化学組成、同位体組成、鉱物組成の解析を行う。これらの解析結果をもとにして、熱水性鉱物と母岩と地球化学的関連および熱水性鉱物を形成する熱水化学反応について議論する。また、種々の年代決定法を適用して年代決定を行い、各熱水域の活動時期について検討を行う。

 熱水環境試料については、生物利用元素の化学組成、同位体組成分析、微生物群集解析などを行い、現場電気化学計測システムによる観測結果や生物試料の同位体分析の結果などとも合わせて考察し、熱水化学環境と微生物および生物群集との関連性を議論する。

 これらの結果を総合して、沖縄トラフにおける熱水活動時期の前後関係と熱水生態系の特徴を比較検討しながら議論することで、熱水活動の消長履歴、熱水環境の変遷史、熱水域固有生物種の進化史を結び付けることを目指す。

 なお、本調査航海で行われる研究の多くの部分は、TAIGA計画「海底下の大河:地球規模の海洋地殻中の移流と生物地球化学作用」(科学研究費補助金・新学術領域研究)の一環として実施されるものである。