IR Theoretical Institute 'Biogeochemical interaction at deep-sea vents'

Woods Hole Oceanographic Institution, USA, September 10-14, 2007

北海道大学・今野祐多


 2007年9月10~14日,アメリカ Woods Hole Oceanographic Institutionにおいて開催されたInterRidge Theoretical Instituteに参加した.はじめの3日間は海底熱水研究を行う微生物・生物・地球化学・地球物理学のそれぞれの研究者がこれまでの研究サマリーや,これからの研究の方向性を示す内容であるといったようなプレゼンテーションを行った.印象深かったのは,高井研氏による微生物学の観点からの発表と, Wolfgang Bach による地質学の観点からの発表である.両氏の発表とも地質的背景に基本ベースを置き,そこから展開される熱水研究の究極的な目標の一つである始源生命や始源地球の解明にリンクしたとても興味深い発表であり,あらためて海底熱水研究の面白さを確認することができた.地質−化学−生物のリンケージがとても興味深かった.

 4日目,5日目に行われたWorking Groupでは,それぞれの興味ごとに別れ少人数で議論する形でミーティングが行われた.私はWG1とWG5に参加した.

 WG1ではChris Germanリーダーとなり熱水プルームについての研究について議論を交わした.WG5ではMarvin LilleyとGeorge Lutherが主体となり現場型センサーについての議論を交わした.実際には,両WGとも既成概念を上回るような議論は行われなかったが,基本的なことを押さえ次に何が見えるのかを考える時間として有意義な物であった.

 全体を通して感じたことは世界の一流紙に名を連ねる海底熱水研究者達が一堂に集い会議を行ったが,それぞれの専門分野の興味から異分野への発散が小さく,自分の興味のための補助的な研究としか考えていないように感じた.そのため異分野からの意見は発展性のある物はあまり無く残念に思えた.このような現状を打開するために必要なのは,今回のような発表の場としての会議ではなく,それぞれの分野から異分野へ発進型の講義形式の会議を行うべきではないかと感じた.