海洋底地球科学における科研費(C.企画調査→特定領域)申請のための会合

10月5日 14:00-16:00 東大理学部1号館843室

出席者:丸山、浦辺、島、石橋、布浦、砂村、沖野、小島、熊谷、山岸

・InterRidge Japanを推進する会(9/30Seamaさんメール参照)での提案を受け、表記の会を開催した。このメールの最後に付けた申請原案を元に、意見交換を行い、以下のように合意した。

・このメールを読んで賛同し、科研費(基盤研究(C)「企画調査」、1年で申請)の分担者になっていただける方、10月11日(火)までに浦辺・砂村まで連絡を!!

(urabe@eps.s.u-tokyo.ac.jp, sunamura@eps.s.u-tokyo.ac.jp)

=====ここをお送り下さい========

・(姓)(名)(フリガナ)

・(研究者番号)

・年齢

・所属研究機関・部局・職

・現在の専門・学位・希望する班**

 → 役割分担は当方で記入します

・エフォート(%):(≦10%にしておいて下さい)

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・今回は企画であることと、特定領域への申請をにらんで、分野を広げる。ただし、

全世界のマッピングではなく、戦略がなければならない。例えば、海底熱水系を調べるだけではだめで、全地球史をやるなどのストーリー。

・目標は20人程度。

・班に区分けするが、専門別としない。時間・空間スケールに分けた対象別の班:

 1.メガスケール班:沖野、島、熊谷

 2.熱水系班:石橋、小島、中村

 3.マイクロスケール班:山岸、布浦、高井、砂村、角皆(5%)

 4.モデル班:全員

・それぞれの分野で他分野に求める情報の整理。特に、地球物理の広いターゲットと、微生物のターゲットのすり合わせ。ただし、これらはシンポですりあわせるのでよいのでないか。

・全体のターゲット

 海洋地殻上部中の熱水循環、海洋地殻下部中の熱水循環、海洋マントル中の熱水循環をターゲットとして、微生物から、化学、地質学、地球物理学まで、問題点を探り、さらに、これに時間軸を入れていってはどうか?

・個別のターゲット

1. 熱水の組成と、岩石の組成の関連を調べるというのも素直かもしれない。(地質・地化>生物・地物)

2. 水素ベースvsイオウベース(生物・地物>地質・地化)

3. 熱水系の寿命というファクターが分かっていない。寿命には階層構造(例:各ベント<周辺のベント群<一カ所のマグマ貫入がもたらす熱水群<海嶺)があるが、寿命<分散か?これは生物にとって見ればシビア。ほかの分野ではどのような影響がある?短い時間軸と長い時間軸。微生物、大型生物のエコシステム的解析。(生物>地物・地質・地化)

3.1 実際にマントル熱水系の微生物は他と異なるのか?定量化が進んでいないので、環境が変わったからどこまで変わったのかまでの精度に達していない。

3.2 場はさまざまなイベントでできあがる。しかし、微生物はその場をえらんでいるのでなく、そこに実現された化学環境に左右されている。つながりがあるかといえば無いかもしれない。

当面の予定と戦略 - 特定領域申請(H18,10月)に向けて

・それぞれの学会等でシンポを複数やる。班員が企画したものであれば、活動として使えるので、今から溜めておく。

・合同大会「海洋底地球科学」セッションで現状把握のための講演会を行う

・それをもとに6−7月に全体シンポ。その後、班別に検討し、申請書を作成。

・IODP掘削についてどう考えるか?にらみながら考える。 

科研費C(企画調査) 申請案 

研 究 目 的

キーワード:

1.海洋底地球科学

2.海洋底地下生物圏

 海洋底地球科学の新たな方向を探る上で、欠かすことができないテーマが海洋底地下生物圏。海洋域の生物のバイオマスの9割を遙かに越える部分が地下生物圏であるとする指摘(Whitman et al., 1998)。

 これが刺激となって、特に熱水系の地下生物圏研究が急激に進んだ。とくに我が国に於いては科学技術振興調整費による「海底熱水系における生物・地質相互作用の解明に関する国際共同研究」(アーキアンパーク計画;2000-2004)および海洋研究開発機構のSUGARプロジェクトにより、世界をリードする研究成果が得られた。

 世界の海底熱水域における微生物研究で得られた大きな成果は、時間的・空間的な違いを越えて、その生物組み合わせに大きな共通性が見られること。また海洋底堆積物中の微生物は従属栄養をベースにしているにもかかわらず、熱水系で発見される系統を多く含んでいる(d'Hondt et al., 2004)。さらに陸上の地熱系からも、それまで海洋にしか知られていなかった系統が発見されており(Takai et al., 2003?, Mori et al., 2004?)、これらの局限環境微生物の進化と伝播という問題が今後重要。

3.生物の進化と伝播(大型、微生物)

 中央海嶺における海底熱水系の「寿命」がきわめて短く、特に中速〜高速拡大軸のそれは2−3年程度で終結。そのため、少なくとも数億年間生き続けてきたことが化石記録から分かっている熱水系において見られる特異な大型生物群集が、どのように進化し伝播してきたのかは海洋生態学上の大問題。

 一方で、微生物の伝播については全く分かっていない。その時期、たどった空間的パス、かかった時間スケールなどについても、何の手がかりも得られていない

 それにもかかわらず、それらが地球上のさまざまな極限環境下で生存し、しかも類似の種構成を示す理由は何であろうか?これらは地球の進化のなかで考えて行かなければ解決されないであろうというのが、我々の認識である。

4.学際的融合の必要性

 これらの問題を地球史の中に正しく位置づけ、さまざまな極限環境の成立した地質プロセスを理解し、化学的にそれらの環境を記述して類似点と相違点を明らかにし、かつその環境を支えている物質と存在状態を理解することによって、はじめてこの問題は解決する。

 そのためには、複数の専門の研究者が共に乗船して問題意識を共有し、サンプルやデータを共有することが不可欠である。本企画調査は、そのような計画を立案するためのものであり、我が国の海洋科学の将来を左右する重要なものといえよう。

他の組織との関連性

 現在活発に活動している海洋底地球科学に関する国際共同研究にはIODP(統合国際深海掘削計画)、InterRidge(国際海嶺共同研究)およびInterMARGIN(インターマージン計画)がある。IODPについては今さら述べるまでもないが、InterRidgeは3年にわたり東京大学海洋研究所に本部が置かれていたこともある国際共同研究で、現在13カ国が加盟している。

 本申請は、InterRidge計画の日本部会であるInterRidge Japanのメンバーが一丸となって提案するもので、海洋底地球科学の新たな方向をともに検討するためのものである。