日本地球惑星科学連合メールニュース 6月号 No.278 2016/06/10
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└■ 1.巻頭言
連合2016年大会ならびに連合の第7期新体制について
公益社団法人日本地球惑星科学連合 会長 川幡 穂高

2016年の連合大会は,5月22~26日に幕張メッセ国際会議場で開催されました.総セッション数(194),国際セッション数(63),発表数(4,515)ともに過去最高を記録し,大会全体の総来場者は7000名を超えました.年会
をこのように成功裡に終えられたのも,会員の皆様のご協力,大会運営に関わられた方々の熱意とご尽力の賜と心より感謝致しております.2016年大会では AGU(American Geophysical Union, 米国地球物理学連合)との共同セッション(48)を開催し,皆さまも会場で感じられたと思いますが,海外の方の参加が特に増加しました.2017年度はAGUとの共同大会を計画しており,連合大会を発展すべく努力いたします.
大会期間中の平成28年度定期社員総会において,連合第7期の理事20名が任命されました.その直後の新理事会において私が会長に選出されました.連合のように大規模で責任ある学会組織の会長を拝命することは,身に余る光栄と考えるとともに,責任の重大さを感じております.前会長,副会長をはじめ,国際学会などの経験豊かな理事・監事・委員会委員,サイエンスセクションボードの方々のお力添えも頂き,皆が協力して連合が発展できればと思います.
初代浜野会長の下,地球惑星科学関連の学会が結集して日本地球惑星科学連合(JpGU)が設立されました.木村元会長の時代に連合は公益法人となり,AGU,EGU(欧州地球科学連合),AOGS(アジアオセアニア地球科学会)とのMOU(国際的協力)が締結されました. 津田前会長の下でJpGUジャーナルのProgress in Earth and Planetary Science(PEPS) の創刊,フェロー制度を含む顕彰制度が創設され,体制も運営も組織的となりました.飛行機の航行に例えると,今期は巡航高度に達し,基本路線を継承しつつ,もう少し長い目でJpGUを俯瞰し,将来の課題について考える機会を作っていこうと思います.
事業としては,AGUとの共同大会,PEPS の国際誌としての登録,大型研究計画,地学教育の振興を始め数々の課題に取り組みたいと思います.今年は地学オリンピックが日本開催となることもあり,一般の方々にも「地学」が身近に存在なればと思います. 2017年にAGUとの共同大会もありますので,海外の研究者との交流,学生も含めた若手研究者へのサポートを推進したいと思います.
JpGUとAGUとの共同大会開催は,日本の地球惑星科学コミュニティにとっても自らの学問を考えるよい機会になると思います.これは,PEPSにもあてはまり,「なぜ,日本で地球惑星科学の一流ジャーナルを創刊する必要があるのか?」という質問と同じです.日本は大陸縁辺域に位置しており,地震・火山などの活動も活発です.また,黒潮を代表とする強い西岸流が低緯度の熱エネルギーを中高緯度にもたらし,気候にも影響を与えます.大陸の国々の気候では,アジアモンス-ンなどが主要因子ですが,日本は大洋に面しているので,エルニーニョ・南方振動などの影響もまともに受けます.また惑星探査においても小惑星から地球外物質を初めて持って帰り,分析に供しました.このように,日本がこれまで進めてきた特徴あるレベルの高い研究を背景とした学問が,JpGUの年会やジャーナルを活用することにより,再認識され,発展できればと考えております.
地球惑星科学は多面的な側面を有していますが,「統合的な地球科学的理解」に達することが重要です.地球惑星科学の分野は,地震観測,海洋観測,宇宙観測,地質・地形調査等を通じて,国家により莫大な資金が投入されて
おり,学術のみならず専門知識を通じた社会へのフィードバックが期待されています.
最後になりますが,JpGUは全会員および全学協会の協力の下に運営されてきました.皆様の声を反映させながら,隠れたニーズを掘り起こし,JpGUがなくてはならないものとの認識に至るよう尽力したいと思います.さらなる
ご支援をお願いいたします.