日本地球惑星科学連合メールニュース 8月号 No.280 2016/08/10
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└■ 1.巻頭言
公益社団法人日本地球惑星科学連合 会長 川幡穂高

8月に入り,本州以南ではすべて梅雨が明けました.今年は,西日本では例年と比べて早めでしたが,関東では遅めとなりました.最近は,大気中の二酸化炭素濃度も400ppmを超え,地球温暖化やヒートアイランドの影響もあるのでしょうか,激しい豪雨に見舞われることが多くなったような気がします.
公益社団法人日本地球惑星科学連合の英文電子ジャーナル「Progress in Earth and Planetary Science」(PEPS)では,「PEPS Editors’ Blog」を開設しています (http://pepsjpgu.blogspot.jp).ここでは,PEPS編集者がジャーナル編集に関係した記事を執筆することが多いのですが,最新記事には,京都大学の山本衛先生が,「日本の『研究力』の現状はどうなのか?」という,どなたも興味をもつであろう重要なトピックスについて書かれていますので,ぜひご覧になって下さい.
これによると,現在,日本の人口あたりの論文数は停滞し,先進国で最も少なくなっているそうで,2013年の人口あたりの論文数は世界35位,台湾は日本の1.9倍,韓国は日本の1.7倍,同年の生産年齢人口あたり論文数では日本は31位となっています.「高等教育機関への人口あたり公的研究資金と論文数は,正の相関をする.日本は先進国で最も低い.」とのことで,基盤的研究資金,研究者の頭数×研究時間をきちんと確保することがキーポイントだそうです.テレビのニュースなどによると,21世紀になってからのノーベル賞の受賞者の国別の数では,自然科学3部門の賞に限ると日本は2位となるので,日本の科学は安泰であると多くの人が思っているかもしれませんが,危機的状態は着実に私達の周辺に訪れているようです.生産年齢人口が減少している今日,一人一人の研究力を向上させるとともに,公的研究資金と若手の研究者雇用費用の増額も含めて,科学技術政策を通じて日本の研究環境の改善を願うばかりです.