日本地球惑星科学連合メールニュース 10月号 No.284 2016/10/11
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└■ 1.巻頭言
公益社団法人日本地球惑星科学連合 会長 川幡穂高

今月もオリンピックの話題ですが,リオデジャネイロではパラリンピックが9月に開催されました.その目的は「スポーツを通して心身を向上させ,文化・国籍などさまざまな違いを乗り越え,友情,連帯感,フェアプレーの
精神をもって,平和でよりよい世界の実現に貢献すること」とされます.近年はパラリンピックによる感動の比重がオリンピックの中でもより大きくなったとの指摘があります.
さて,私達の分野でも,今年は重要なオリンピックが日本で開催されました.それが国際地学オリンピック(International Earth Science Olympiad,IESO) です.2007年の韓国での第1回以来,今回は第10回となり,風光明媚な三重県津市で 8月20日~27日に開催されました.このオリンピックは,基本的に高校生を対象として地学の問題を解く能力を競う大会です.最初にスタートした時には,7ヶ国・地域(日本はオブザーバーとして大人だけ参加)でしたが,急速に発展し,今回は最多(タイ)の26ヶ国・地域の生徒が参加するまでに増えました.国内予選応募も 2,000名を超えました.最終的に国際大会に出場できる選手は各国・地域から最大4名づつとなっています.今回は日本は金メダル3つ,銀メダル1つを受賞しました.
この大会の主な目的は,地学分野に秀でた生徒の発掘と地学学習の促進,地学及び地学教育における国際交流・協力の促進です.地学オリンピックというと,「筆記試験テスト」といった冷たい感じをもたれるかもしれませんが,実際には,実技試験なども行なわれ,地学教育に不可欠のフィールドでの調査力も審査の対象となります.また,メダルの審査対象にはなりませんが,国別ではなく,国際的なグループ構成により国際協力野外調査と呼ばれる活動も実施されます.今回は,熊野市で行なわれ,優秀チームが表彰されました.また、文化を尋ねるといった目的での伊勢神宮,伊賀上野市への訪問などでも,地元の高校生が案内役などを受け持ち,それらの活動を通じて地学及び地学教育における国際交流・協力の促進というもう一つの大きな目的も達成されました.
最終日の前日の晩には,「さよならparty」 が開催され,国別の文化の紹介などでは国際的な交流の成果が表れ,非常に和やかな雰囲気で,他の科学オリンピックとは随分違うといったコメントもありました.今回,多くの方々の献身的な貢献により,IESO三重大会が成功裡のうちに終了されたことを祝福するとともに,今後のさらなる発展を期待しております.なお,日本地球惑星科学連合は,国際地学オリンピックを共催し,開催経費の一部を分担するとともに,年会において高校生・学部生の参加料の免除などを通じて,高校生のポスター発表や学部生の聴講を促進してきております.皆様のお近くの若い方々にもぜひお伝え下さるよう,よろしくお願いいたします.