日本地球惑星科学連合メールニュース 3月号 No.291 2017/3/10
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└■ 1.巻頭言
公益社団法人日本地球惑星科学連合 会長 川幡穂高
今年もプロ野球のシーズンが始まろうとしています.大リーグのイチロー選手には,今年も活躍してもらいたいものです.皆様もご存知のように,彼は最優秀選手,首位打者,盗塁王,最多安打,ゴールドグラブなど大きなタイトルを獲得してきましたが,ホームランバッターの人気が高かった米国において,安打とスピードの「野球の魅力」を再認識させた点でも彼は偉大な足跡を残しました.とはいえ,2016年のシーズン直前には,「イチロー選手も体の衰えも目立ってきたので,そろそろおしまいかもしれない」とのコメントも聞かれました.しかし,昨年には史上30人目となるメジャー通算3000安打,そして,史上39人目となるメジャー通算500盗塁を達成しました.
イチロー選手も2017年には44歳となり,同じくらいの年齢の野球選手のほとんどが引退していることを考えると,スポーツ選手として若くはないと言えます.これを私達のコミュニティにあてはめると,「年をとっても,前線で頑張れ」となるかもしれません.新聞記事によると,「日本人は,オリジナリティを生み出す力は年齢に大いに依存する」と考えるそうですが,「イギリス人は,オリジナリティは年齢より,むしろ人に宿る」と考えているとのことです.年齢に関わらず,研究も同じように個人の才能や努力によるのかもしれません.
イチロー選手の魅力は,含蓄のある言葉にも表れています.守備に関して,ゴールドグラブ賞というのがありますが,これは派手なプレー,すごいプレーをするばかりでなく,守備のカバーといった直接ボールとは関係ないが,重要な基本プレーをきっちりできることが評価の対象になるそうで,イチロー選手も「スコアブックには残らないが,味方が安心できる確実なプレー」に価値を見出しています.イチロー選手は,昨年3000安打達成の後に,「業績を残す人は,人柄もりっぱであってほしい」とも言っています.野村克也監督は,「優れた成績を残しても,誇れない野球選手はたくさんいるが,彼は実際に誇れる.『心・技・体』のすべてに優れ,かつ人柄も誇れるから」と高く評価しているそうです.
話題は少し変わりますが,AGUでは,最近「ハラスメント」に関する規則を詳細に議論しています. 2016年12月のAGUのFall Meeting期間中に行なわれた世界の学会長の懇談会でも,「ハラスメント」に対して学会の厳しい態度をとる方向に賛同が得られています.日本地球惑星科学連合においても,ダイバーシティ推進委員会において,現在「ハラスメント」に関する規則などの議論を開始しました.