日本地球惑星科学連合メールニュース 11月号 No.302 2017/11/10
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└■ 1.巻頭言
公益社団法人日本地球惑星科学連合 会長 川幡穂高

太陽暦と太陰暦は何日かずれています.2017年の場合には11月18日~12月17日が旧暦10月となります.10月は「神無月」と呼ばれ,出雲大社に全国の神が集合してしまうために,出雲以外には神がいなくなると言われますが,これはどうも俗説らしく,神無月の「無」が「の」にあたる連体助詞「な」で「神の月」という意味が有力説のようです.とはいえ,これは「自然に八百万の神が宿り」,「沢山の神様が存在するという」日本人の思いとも矛盾しないので,広く受け入れられてきたのかもしれません.日本人は基本的に宗教には寛容で,お正月には神宮にお参りし,東大寺に行けば大仏さんを拝み,年末になれば商業的とはいえ,クリスマスをお祝いします.
現在の宗教別人口は,統計によっても違いがありますが,キリスト教徒が約22億,イスラム教徒が約16億人で,ヒンズー教が約9億人,仏教が約4億人となっています.世界最古の宗教と言われるユダヤ教の宗徒数は約1200万人です.出生率の違いなどにより,2070年にはキリスト教徒とイスラム教徒はほぼ同数となり,2100年にはイスラム教徒が35%に達してキリスト教徒を1ポイント上回ると予想されています.一方,無神論者の数も世界的に増加しているとのことです.
現代日本人は食に対するイデオロギーがほとんど無いと言えるかもしれませんが,戒律により規制が厳しい場合も沢山あります.ユダヤ教の戒律は厳しく,食物の清浄規定は「カシュート」と呼ばれます.規制は沢山あり,鱗がある魚は食べられますが,鱗がない「イカ,タコ,海老」,「豚,イノシシ,ウサギ」は食べられません.イスラム教の国々でも中華レストランでは豚肉料理が供されるのですが,私達が訪れたエルサレム市では提供さないよう規則は厳格です.イスラム教の人々が戒律から避ける食材は「豚」「アルコール」「血液」「宗教上の適切な処理が施されていない肉」となります.ヒンズー教の人々は「牛を聖なるもの」とするので牛肉は食しません.基本的に殺生を避けたいためヒンドゥー教徒にはベジタリアンが多いようです.
連合大会期間中に海外の若手研究者との交流の場として 「International mixer luncheon」を開催してきていますが,ハラルとベジタリアンの希望を聞いてホテルニューオータニ幕張に対応をお願いしています.宗教上や健康上の理由でベジタリアンという方々のほかに,近年では Animal Rights(動物の権利)などの観点からベジタリアンになる方が増えているそうです.懇親会では,ベジタリアンのコーナーを設けています.また,2017年大会では千葉市に協力を仰ぎ,千葉市のムスリム対応レストランマップを会場で提供しました.
http://www.jpgu.org/meeting_e2017/img/access/chiba_map_for_web.pdf
これには,イスラム教の研究者より好評のコメントをいただきました.また,イスラム教の人々は一日何度かお祈りをします.そのため,男女別々に部屋http://www.jpgu.org/meeting_e2017/access.html を用意しました.
オリンピックを控え,日本政府も世界から来日する旅行者が快適に過ごせるように努力を促していますが,連合大会に参加される科学者にも満足していただけるよう,これからも参加者からのリクエストに応えていきたいと考えています.