日本地球惑星科学連合メールニュース 3月号 No.321 2019/3/11
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└■ 1.巻頭言
公益社団法人日本地球惑星科学連合 会長 川幡穂高

 今年も春めいてきました.日本地球惑星科学連合2019年大会に多くのアブストラクト投稿どうもありがとうございました.早期参加登録は5月8日23時59分まで受け付けております.皆様のご参加をお待ちしております.
 さて,仮の話ですが,もし皆さまのところにミャンマーの指導者「アウンサンスーチー (Aung San Suu Kyi)氏」から「連合大会に参加したいので,代理で参加登録していただけませんか?」という依頼がきたらどうされますか? JpGUでの登録には,「姓」(+「ミドルネーム」)+「名」を入力する必要があります,どこで区切ればよいのでしょうか? 実は,『Aung San Suu Kyi』さんは名前のみで,姓はありません. 「このような種類の名前」をもった連合大会参加者が,実際におられます.
 日本で多い姓(苗字)は,多い方から「佐藤,鈴木,高橋,田中,伊藤,渡辺/渡邊,山本,中村,小林,加藤」で, ここまで合計すると日本人の1割以上となります.「佐藤,鈴木」は多いように見えても,各々約2%で,日本人の姓は10万種をはるかに超えます.一方,中国は日本の10倍以上の人口を有しますが,姓は4700種ほどで 「王(Wang),李(Lee,Li),張(Zhang)」が各々1億人弱,この3姓で全人口の2割以上となります.ちなみに「王」は「King」を意味するのではないと,中国人の留学生「王さん」から聞きました.朝鮮半島では姓の数はずっと少なく約400種. 「金 (Kim, Khim),李(Lee,Rhee),朴(Park)」の3姓で4割以上を占めます.ギネス・ワールド認定によると世界の家系で一番長いのは「孔子世家譜」です.中国政府は定期的に孔子一家の人数を調べていて,近年の調査では,一族の人数は 200万人を超えました.このように同姓の人数が多くなると同姓同名の人がでてきてしまい,論文の引用で,WANG, A.となった場合,どの研究者の論文であるか,わからなくなってしまいます.
 昨年(2018年)の連合大会でのユニオンセッション「地球惑星科学における学術出版の将来」で, 宮入暢子氏(ORCIDアジア太平洋地域)にお願いして講演をしていただきました.ORCIDとは「Open Researcher and Contributor IDentifier」の省略形で,これは専門分野,所属機関,地域を超えて,研究者ごとに1つのIDを授与し,地域社会に拠点を置く非営利の取り組みです.ORCID番号は研究者が学術活動のために使う個人番号で,登録すると 16ケタの識別番号がもらえます.研究者が異動や改姓をしても,この番号を一貫して利用すれば一生使えます.現在,全世界で 200万人以上が使用しており,登録人数は急速に伸びています. ORCIDの有用性は,過去の業績一覧を迅速かつ正確に第三者(大学+研究所+研究助成機関および研究者)に対して提示できることでClarivate Analytics(旧Thomson Reuter),Springer-Nature, Elsevierもパートナーとして登録されています.そこで,論文投稿時に著者がORCIDを使うと,出版時に著者のORCIDレコードに自動的に追加されるので自分で手作業で更新する必要がありません.AGU (アメリカ地球物理学連合)の雑誌に投稿するには, ORCID番号の入力が必須なように,今後さらに使用頻度が増すものと予想されます.
 JpGUでは,学会の研究者への便宜をはかるため ORCIDのメンバーとなり,分担金を負担しています.また,会員の皆様の業績の管理・公開機能として「Society to ORCID」システムを導入し,連合大会やPEPSでの発表業績などを,JpGUの名前管轄のもとで ORCIDデータベースに登録するサービスを予定しています.ORCIDへの登録は,http://www.orcid.org にて無料で登録できますので,皆様も参加していただけたらと思います.