日本地球惑星科学連合メールニュース 7月号 No.325 2019/7/10
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└■ 1.巻頭言
公益社団法人日本地球惑星科学連合 会長 川幡穂高

 連合大会が終了して早いもので一月が経ちました.今年の大会について,皆様のご意向を把握し,来年のJpGU-AGU共同開催に反映させていきたいと思いますので,下記サイトよりコメントをいただければと思います.
日本語: https://business.form-mailer.jp/fms/05361a8e88070
英語:  https://business.form-mailer.jp/fms/9fca16e2105784
梅雨も開けると今年も暑い夏が来て,調査に際して熱中症などにくれぐれもご注意下さいと書こうと思っていた矢先,フランスで史上最高気温45.9℃というニュースが飛び込んできました.
私達は発汗には体温を下げる機能があると習いました.100mlの水が25℃,平衡蒸気圧下で蒸発すると53.9kcalの熱を奪います.日本人男性の平均体重を70kgとすると,人体の比熱は約0.83なので熱容量は58.1kcalとなり,0.1Lの発汗でほぼ1℃の体温上昇を防ぐ効果があります.実は,夏に炎天下で10分間歩くと約100mlの汗をかくそうなので,「夏季には10分間歩いたら0.1L水を飲む!!」と覚えておくと安全かと思います.もちろん陸上競技などのスポーツの場合には,通常の気温でも倍程度の汗をかきます.
そもそも,私達は発熱しています.その量は体重に依存しますが,どれ位でしょうか? 答えは約100Wです.発熱と発汗により体温は一定に保たれ,寒い冬には初夏と比べ発熱量を自動的に約20%上げているようです.夏は汗をかくのでバテてしまうと思っている方もおられますが,サウナを1時間楽しんで発汗で減量しても150kcal 程度しかエネルギーを消耗しません.ちなみに私達が1日に消費するカロリーは2000?2500kcalです.夏バテの原因は発汗に伴う血液成分の変化や食欲減退で適切な養分補給が難しくなるからです.
さて,私達が発熱するには,体内で有機物を酸化してエネルギーを獲得するために酸素を吸う必要があります.1回呼吸すると,吐息の空気には酸素が含まれないと考えるのは誤りで,実は酸素はかなり残っており(酸素濃度は吸気で20.9%,吐気で16.4%),1日あたり750g以上の酸素を消費します.低地から高地に飛行機などで急に移動すると,高山病になりやくなります.巡航高度(1万m)の飛行機内は通常0.8気圧で,標高2,000mの山頂と同様の気圧です.これに対し,富士山(3776m)やエベレスト(8850m)の山頂の気圧は,それぞれ0.62気圧(630hPa),0.30気圧(300hPa)しかありません.大気組成は大気圏内ではあまり変化がないので,酸素の量はこの気圧の20%相当量となります.8000m 以上の高地では,「空気を吸おう」と積極的に意識しないと酸欠になってしまいます.今年,エベレストの山頂付近が登山者で大渋滞となり,予定の時間で山頂に到達できなかったため何人かが犠牲となりました.8000m以上の高地は「デスゾーン」と呼ばれ,酸素不足のために有機物の燃焼が難しく,人間が長時間生活することは不可能な地域とされます.
「空気みたいな存在」という言葉は良い意味にも悪い意味にも使われるそうですが,JpGUは皆様の研究活動にとって,「当たり前だが,なくてはならない存在」となるよう努力していきたいと思いますので,アンケートへのコメント,よろしくお願いいたします.