データはどこにあるのか?
海底地形図を描くためのデータを入手するには以下の4つの方法がある......
- 自分で観測する
- 観測した人にねだる
- 無料の公開データを手に入れる
- 買う:もうあまりない
以下は3についての情報. データを論文に使用する際の引用方法などの注釈がついていることが多いので十分注意して使うこと。
無料の公開水深データ
[ グリッド ]
- ETOPO Global Relief Model
- 定番中の定番。NGDC(米国地球物理データセンター)が提供しているグローバル地形データセット。極域も含め全地球の海陸あわせた標
高・水深のグリッドデータである。音響測深による実測データと,衛星高度計から得られる推定水深のハイブリッド.ETOPO5と呼ばれる5分グリッド(緯度5分=~9.2km)でスタートし、その後衛星高度計のデータによる補間を加えたETOPO2(2分グリッド=〜3.7km), ETOPO1(1分=~1.8km)を経て,現在ETOPO2022で15sec=463mの解像度となっている.ただし,この細かいグリッドは全球だと巨大なファイルになるため,分割したファイルをダウンロードすることになる.30sec, 60sec(1min)もダウンロードできるので,全球プロットなら粗いデータをダウンロードすればよい.netCDFとgeotifで提供されている.南極のデータが氷床の上をなぞるものと、氷の下の地面をなぞるものの2バージョンある。
- GEBCO
- IHO(国際水路機関)が長年発行してきた世界の海底地形図が、2002年の大幅改版を期にディジタル化.
これまでのGEBCO紙海図は、あくまでも船舶測量データに基づいていたが、改版後はかなり衛星高度計の推定水深を導入したので,だんだんETOPOとの差はなくなっている。解像度も当初は1分グリッドだったが,最新のGEBCO_2023 Gridは15sec=463m. 海底地形の国際的な名称を調べるサイトもここからたどれる.
- IBCAO (International Bathymetry Chart for Arctic Ocean)
- 氷に覆われた高緯度域は通常の観測船によるデータはほとんどなく、衛星高度計も使えない。IBCAOは国際的な協力のもとに実施されてい
る北極海の地形図作成プロジェクトで、観測船・潜水船・ヨーロッパの衛星データ等をコンパイルしてディジタルデータセットを作成しており、公開されてい
る。2022年にver4.2が公開され、200mグリッドのデータとなっている。netCDFとgeotiffで提供。
- 日本周辺500mメッシュ水深 (JODC)
- 日本周辺の定番。海上保安庁海洋情報部が、国内の船舶による水深データをコンパイルして作成した日本周辺の500mグリッドデータ。かなり細かく分割されているので,必要なエリアをダウンロードする.エラーデータはほとんどなく信頼度は高い。ただし,実際の分解能は場所により異なり,日本周辺の海溝域はほぼ最新の測深器による精度のよいデータに基づいているが、一部は古い観測データのコンパイルである。
- GMRT(Global Multi-Resolution TOpography Data Synthesis)
- マルチビームの測深データは各国のさまざまな船舶で取得されているが、測深器の違いや調査仕様の違いにより解像度はデータセットごとに大
きく異なる。このように解像度の異なる生データを収集・再解析してグリッド化ようとするプロジェクトである。コンパイルされたデータをウェブでチェック
し、地図やグリッドデータ(グリッドサイズが選択できることが多い)をダウンロードできる。当然、非常に細かいデータが得られる場所もあり、まったくデー
タのない場所もある。オープンソース化の流れで非常に充実してきた.
最近は論文公表時に元データが開示されることが必要条件になっていることが多いため,地形データはPANGAEA等のオープンデータサイトにかなりあります.が,論文からリンクされている場合はよいが,闇雲に地名などで検索をかけると必要なものになかなかたどり着かない.
[その他]
- NGDC: Marine Trackline Geophysical Data
- NGDC(米国NOAAの地球物理のデータセンター)は、世界中の船舶取得データを収集管理している。日本のデータも、原則としては日本
海洋データセンターを通じてNGDCに送られる。このサイトからは、船の航跡に沿った種々のデータ(水深、磁気異常、重力等)の生に近いデータを得ること
ができる。ただし、これは[trackline]データなので、水深は直下水深しかない。広域の測深データについては、上記のETOPOに集約されてい
く。
- JODC(日本海洋データセンター)所蔵の観測データ
- 上述の500mメッシュ水深以外の海洋観測データも豊富に提供されている.ダウンロード可.地形に関しては,このサイトにないもの,より精度の良いデータも共同研究契約等を結べば提供されるので,よく知っている人に聞いてみるのが早い。
- DARWIN (JAMSTECの航海・潜航データ探索システム)
- JAMSTEC所有の船舶で得られたデータの提供・利用申請のためのサイト.かつてはweb上の地図で範囲を指定し,データの種類や船舶等をキーとして検索をかけ,ダウンロードできる.地形データは基本はクリーニングされたxyzのアスキーファイル.要望すれば生データもとれる.地磁気・重力等の地球物理データ,生物・岩石・堆積物等のリストもこちらから.
販売されている水深データ
- JTOPO30
- MIRC(海洋情報研究センター、水路協会の一部門)が制作、販売。海上保安庁の測量データの品質を検査し、精度の高いデータを優先して
統合した信頼度の高い日本周辺の30secグリッド(〜1km)のデータファイル。3つのフォーマットのファイルが同梱され、GMTで使えるnetCDF
の形式のファイルが含まれる。北緯18-48度、東経120-150度の範囲をカバーし、緯度3度×経度10度の海域ごとに販売されている。1海域3万
円。現在は、2011年刊行のver.2。GEBCO, ETOPOが良くなったので今はあえて買う必要がないかなあ.
そのほかちょっと便利
- PLATES project
- プレート運動復元を目的としたプロジェクトであるが、プレート境界位置のディジタルデータ、ホットスポットやオフィオライトの位置データ、ジオイドモデル、プレート運動のグリッド版(ちょっと古い)などのちょいと便利なデータセットが集められている。ただし、常に更新されているわけではないので、最新情報はやはり最新の論
文からあたるしかないのだが....
- Seafloor Age
- Muller et al. (2008)論文に基づいた、海底の拡大速度、年齢のディジタルデータ。