データはどこにあるのか? 
海底地形図を描くためのデータを入手するには以下の4つの方法がある......
- 自分で観測する
- 観測した人にねだる
- 無料の公開データを手に入れる
- 買う
以下は3と4についての情報. 3については特にデータを論文に使用する際の引用方法などの注釈がついていることが多いので十分注意して使うこと。
無料の公開水深データ
[ グリッド ]
- ETOPO
- 定番中の定番。NGDC(米国地球物理データセンター)が提供しているグローバル地形データセット。極域も含め全地球の海陸あわせた標
高・水深のグリッドデータである。ETOPO5と呼ばれる5分グリッド(緯度5分=~9.2km)でスタートし、その後衛星高度計のデータによる補間を加
えたETOPO2(2分グリッド=〜3.7km)となり、現在はETOPO1として1分=~1.8kmの解像度のデータセットとなっている。南極のデータ
が氷床の上をなぞるものと、氷の下の地面をなぞるものの2バージョンある。ひとつのグリッドとして一括ダウンロードもできるし、ウェブサイトで範囲指定を
して必要範囲のデータだけアスキーやnetCDFグリッド等でダウンロードすることもできる。
- GEBCO
- IHO(国際水路機関)が長年発行してきた世界の海底地形図が、2002年の大幅改版を期にディジタルグリッドデータCDの販売を開始。
これまでのGEBCO紙海図は、あくまでも船舶測量データに基づいていたが、改版後はかなり衛星高度計の推定水深を導入した。それでも、ETOPOよりも
船舶データ重視の傾向があり、場所によってはかなり高品質・高精度のデータが含まれている。1分グリッド。当初は販売のみだったが、現在ではメールアドレ
ス登録すれば無償でダウンロードできる。
- IBCAO (International Bathymetry Chart for Arctic Ocean)
- 氷に覆われた高緯度域は通常の観測船によるデータはほとんどなく、衛星高度計も使えない。IBCAOは国際的な協力のもとに実施されてい
る北極海の地形図作成プロジェクトで、観測船・潜水船・ヨーロッパの衛星データ等をコンパイルしてディジタルデータセットを作成しており、公開されてい
る。2012年にver3が公開され、500mグリッドのデータとなっている。
- J-EGG500 (Japan Expert Grid for Geography)
- 日本周辺の定番。海上保安庁海洋情報部が、国内の船舶による水深データをコンパイルして作成した日本周辺の500mグリッドデータ。アス
キーデータで入手できる。データのある範囲が変則的(長方形ではない)だが、エラーデータはほとんどなく信頼度は高い。日本周辺の海溝域はほぼ最新の測深
器による精度のよいデータに基づいているが、一部は古い観測データのコンパイルで、元のデータの分布図が同時に公開されている。
- GMRT(Global Multi-Resolution TOpography Data Synthesis)
- マルチビームの測深データは各国のさまざまな船舶で取得されているが、測深器の違いや調査仕様の違いにより解像度はデータセットごとに大
きく異なる。このように解像度の異なる生データを収集・再解析してグリッド化ようとするプロジェクトである。コンパイルされたデータをウェブでチェック
し、地図やグリッドデータ(グリッドサイズが選択できることが多い)をダウンロードできる。当然、非常に細かいデータが得られる場所もあり、まったくデー
タのない場所もある。
[その他]
- NGDC: Marine Trackline Geophysical Data
- NGDC(米国NOAAの地球物理のデータセンター)は、世界中の船舶取得データを収集管理している。日本のデータも、原則としては日本
海洋データセンターを通じてNGDCに送られる。このサイトからは、船の航跡に沿った種々のデータ(水深、磁気異常、重力等)の生に近いデータを得ること
ができる。ただし、これは[trackline]データなので、水深は直下水深しかない。広域の測深データについては、上記のETOPOに集約されてい
く。
- JODC(日本海洋データセンター)所蔵の観測データ
- J-EGGのように整備されたグリッドではないが、JODCが保管している地形観測データの一部は提供依頼書を書くことで入手できる。大学・研究機関等が対象。どのようなデータが提供可能なのか完全にカタログ化されていないので、よく知っている人に聞いてみるのが早い。
- DARWIN (JAMSTECの航海・潜航データ探索システム)
- JAMSTEC所有の船舶で得られたデータを検索、猶予期間の切れたデータはダウンロードできる。年々システムが向上して、最近はかなりデータが
探しやすくなった。マルチビームデータについては、クリーニングされてxyzのアスキーファイルとして提供されている。これは一般的には非常に便利で
あるが、やや古いデータなどでクリーニングが不十分でエラーデータが残っていたり、位置や機器校正に問題があった場合などに、生データでないので修正がき
かない。地磁気や重力など多くの種類のデータも提供されているので、日本近海で調査をする場合はまずここにアクセスして既存データを確認するとよい。学術目
的で生データが欲しい場合には、提供依頼書を書けば猶予期間後に入手できる。
販売されている水深データ
- JTOPO30
- MIRC(海洋情報研究センター、水路協会の一部門)が制作、販売。海上保安庁の測量データの品質を検査し、精度の高いデータを優先して
統合した信頼度の高い日本周辺の30secグリッド(〜1km)のデータファイル。3つのフォーマットのファイルが同梱され、GMTで使えるnetCDF
の形式のファイルが含まれる。北緯18-48度、東経120-150度の範囲をカバーし、緯度3度×経度10度の海域ごとに販売されている。1海域3万
円。現在は、2011年刊行のver.2。
- JTOPO1
- MIRC(海洋情報研究センター、水路協会の一部門)が制作、販売。JTOPO30より広域で、北緯0-48度、東経120-180度をカバーし、緯
度6度×経度10度の海域ごとに販売されている。衛星高度計のデータを用いて地形を推定し、JODC所有の測量データに基づいて補正したもの。1分グリッ
ド。2003年につくられたが、現在は「在庫お問い合わせください」となっていて、いちおう生産完了品扱い。製作当時は、グローバルな水深データセットが
2分グリッドだったので、北太平洋の1分グリッドは非常に価値があったが、現在ではグローバルセットが1分グリッドになったので(ETOPO1)これをあ
えて購入する必要はほとんどない。
そのほかちょっと便利
- iGMT Datasets
- PLATES projects
- 前者はGMTをinteractiveに使うユーザーインタフェースの開発、後者はプレート運動復元を目的としたプロジェクトであるが、
これらのプロジェクトのサイトには、プレート境界位置のディジタルデータ、ホットスポットやオフィオライトの位置データ、ジオイドモデル、プレート運動の
グリッド版(ちょっと古い)などのちょいと便利なデータセットが集められている。ただし、常に更新されているわけではないので、最新情報はやはり最新の論
文からあたるしかないのだが....
- Seafloor Age
- Muller et al. (2008)論文に基づいた、海底の拡大速度、年齢のディジタルデータ。