芦 寿一郎
兼務准教授
大学院新領域創成科学研究科
准教授

専門:海洋地質学

1)海底活断層
 海底活断層の分布は,付加プリズムの成長過程,流体湧出,津波や地震の防災を考える上で最も基本的な情報であると言える.南海トラフの活断層の分布をスワス海底地形調査,サイドスキャンソナー画像,反斜法地震探査断面,潜水艇による海底観察に基づいてマッピングしている(東海沖海底活断層研究会,1999).


図1 南海トラフの海底活断層分布図


2)メタンハイドレートBSR
 メタンハイドレートは,炭化水素の循環,地球温暖化,海底斜面の安定を考える上で重要である.さらに,メタンハイドレートを含む地層とその下のフリーガス層の境界と考えられている地震探査断面上にみられるBSR(海底疑似反射面)は,地温勾配やガス移動過程の推定に用いることができる.南海トラフ付加プリズムと前弧海盆におけるBSRの分布を調べ,熱流量とメタンガスの集積過程を推定している (Ashi and Taira, 1993; Ashi et al., 2001).

図2 南海トラフにおけるメタンハイドレートBSRと熱流量の分布

3)泥火山

 泥火山は,泥ダイアピルによって未固結泥が深部からもたらされ地表あるいは海底に噴き出して形成されたものである.泥火山の研究によって,掘削では到達できない深度の地質・地球化学・微生物の情報を得ることができる.熊野トラフにおいて,サイドスキャンソナー・ピストンコア・潜水艇を用いた研究を行なっている.これまでに,泥火山の表層地形や構成物質,活動の休止時期を明らかにしている(Sawada et al., 2001).


図3 深海曳航式サイドスキャンソナー「WADATSUMI」とそれによって得られた熊野トラフの泥火山のモザイク画像

4)冷湧水とテクトニクス

 沈み込み帯の冷湧水はテクトニクスと深く関係している.流体排出経路の関連した海底下の地質構造は,冷湧水の分布とその化学組成から推定することができる.南海トラフにおいて,メタン湧出に伴う化学合成生物群集の分布調査を潜水艇,深海曳航式ビデオなどを
用いて調査している.これまでの研究では,ほとんどの冷湧水が海底活断層(東海沖海底活断層研究会,1999; Ashi et al., 2002)か泥火山に分布していることが分かっている.


図4 第2渥美海丘の3次元IZANAGIサイドスキャンソナー画像とJAMSTEC「しんかい2000」で得られた二枚貝コロニーの海底写真

5)ガンマ線測定

 海底におけるガンマ線はJAMSTECの潜水艇と無人探査機によって常時測定されている.着底・離底による海底の擾乱作用を避け,長期計測を行なうため,自己記録式ガンマ線測定装置(GRAMS)を開発した.南海トラフ付加プリズムの海底活断層周辺では,周囲と比べ高濃度のウラン系列の放射性核種が見いだされている(芦ほか,2003).ガンマ線が,断層深部での岩石変形の指標になるかどうかを評価している.

図5 GRAMS(自己記録式ガンマ線測定装置)と熊野沖の序列外スラストにおいて観測されたウラン系列の放射性核種の高濃度異常.



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