メタンハイドレートは,炭化水素の循環,地球温暖化,海底斜面の安定を考える上で重要である.さらに,メタンハイドレートを含む地層とその下のフリーガス層の境界と考えられている地震探査断面上にみられるBSR(海底疑似反射面)は,地温勾配やガス移動過程の推定に用いることができる.南海トラフ付加プリズムと前弧海盆におけるBSRの分布を調べ,熱流量とメタンガスの集積過程を推定している (Ashi and Taira, 1993; Ashi et al., 2001).
図2 南海トラフにおけるメタンハイドレートBSRと熱流量の分布
3)泥火山
泥火山は,泥ダイアピルによって未固結泥が深部からもたらされ地表あるいは海底に噴き出して形成されたものである.泥火山の研究によって,掘削では到達できない深度の地質・地球化学・微生物の情報を得ることができる.熊野トラフにおいて,サイドスキャンソナー・ピストンコア・潜水艇を用いた研究を行なっている.これまでに,泥火山の表層地形や構成物質,活動の休止時期を明らかにしている(Sawada et al., 2001).
沈み込み帯の冷湧水はテクトニクスと深く関係している.流体排出経路の関連した海底下の地質構造は,冷湧水の分布とその化学組成から推定することができる.南海トラフにおいて,メタン湧出に伴う化学合成生物群集の分布調査を潜水艇,深海曳航式ビデオなどを
用いて調査している.これまでの研究では,ほとんどの冷湧水が海底活断層(東海沖海底活断層研究会,1999; Ashi et al., 2002)か泥火山に分布していることが分かっている.