山口 飛鳥
助教
専門:海洋地質学・構造地質学・
化学地質学
【概要】

 プレート沈み込み帯とその周辺のテクトニックな諸現象の理解を目指し、海と陸の双方を対象に、海洋観測・深海掘削・地質調査・化学分析・物性測定などさまざまな手法を総合して研究に取り組んでいます。

【現在進行中の研究】
(1) 沈み込み帯の断層を掘る
〜掘削コア・カッティングスを用いた沈み込み帯の断層運動履歴・変形変成履歴解析〜

統合国際深海掘削計画(IODP)は、海底下の掘削により地球の歴史と進化を明らかにしようとする巨大国際プロジェクトです。私は、日本の地球深部探査船「ちきゅう」(図1)、及び米国の科学掘削船JOIDES Resolution号によって海底下深部から採取された試料(図2)の分析・解析を通して、沈み込み帯の断層発達史、断層沿いの摩擦発熱や流体移動の解明に取り組んでいます。これまでに、南海トラフにおける第316次・第333次・第338次の3回の掘削航海に構造地質学者として乗船しました。研究対象は南海トラフの他、日本海溝、コスタリカ沖中米海溝などのサンプルも扱っています。図3は南海トラフの分岐断層浅部(海底下約300 m)から採取されたコアの分析結果で、断層のすべりに伴う粘土鉱物の組成変化が示唆されました。


図1 地球深部探査船「ちきゅう」


図2 「ちきゅう」のサンプリング台に並べられたコア


図3 蛍光X線コアロガーによる、南海トラフ巨大分岐断層浅部の断層岩化学組成マッピング結果。断層面でK, Alの濃集が見られ、断層面でのすべりに伴うイライトの増加が示唆される (Yamaguchi et al., 2011, Geology)

(2) 玄武岩変質学
〜海洋地殻の一生と沈み込み帯〜

海洋地殻は海嶺で生成されてから沈み込み帯に至るまでに、海嶺での熱水循環やその後の海底風化作用に伴う変質で、含水鉱物を生じています。海洋地殻が沈み込んだ際の含水鉱物からの脱水とそれに伴う元素の移動は、沈み込み帯浅部の水収支や断層力学にも影響を与えると予想されますが、これまでほとんど取り上げられてきませんでした。そこで私は、現世のさまざまな海域の海洋底玄武岩(図4)、および陸上に付加した海洋地殻物質(図5)の化学組成・鉱物組成分析、岩石物性測定を行い(図6)、海洋底での地殻の変質過程と、それが沈み込み帯の脱水・変形に果たす役割の解明を目指しています。


図4 沈み込み直前の変質玄武岩(南海トラフ、IODP第333次航海)


図5 付加体に取り込まれた変質玄武岩(四万十帯牟岐メランジュ)


図6 玄武岩を用いた透水実験の様子(JAMSTEC谷川亘研究員との共同研究)

(3) フィールド調査
〜陸上付加体にみる沈み込み帯の断層運動・流体移動リンクの解明〜

陸上付加体の野外地質調査と、採取したサンプルの物性測定・化学分析から、付加体の変形過程と流体移動・物質循環の解析を行っています。四国四万十帯牟岐地域、九州四万十帯延岡地域(図7)、美濃帯犬山地域、米国アラスカ州コディアク島などがこれまでの主なフィールドです。四万十帯では、テクトニックメランジュの変形構造解析、鉱物脈の主要・微量元素・同位体分析(図8)などから、プレート境界の深さ5-10km程度の場所における流体の起源や組成に関する研究を行いました。

四万十帯は若い海洋プレートの沈み込みにより形成された付加体で、南海トラフの陸上アナログに近いと考えられます。一方、美濃・丹波帯や足尾帯、秩父帯、北部北上帯などのジュラ紀付加体には、1億年を超える遠洋性堆積物(チャート)の連続堆積が認められ、古い海洋プレートが沈み込んでいたという点で日本海溝の陸上アナログと考えられます。この観点から、2011年東北地方太平洋沖地震の震源付近での変形の実態を探るべく、ジュラ紀付加体に注目して野外調査と試料分析を行っています(図9)。


図7 四万十帯北川層群の厚いタービダイト層


図8a 四万十帯延岡衝上断層周辺の剪断帯に産するアンケライト脈


図8b 電子線プローブマイクロアナライザー (EPMA) によるアンケライト脈内部のFe組成マッピング像(寒色系ほど低いFe濃度、スケールバー0.1 mm)。断層沿いの流体の酸化還元状態が変化し、脈の成長とともにFe量が減少していることを示す (Yamaguchi et al., 2011, EPSL)。


図9 美濃帯犬山地域の褶曲したチャート層

(4) 船に乗る
〜海溝域の海洋地質学〜

学術研究船白鳳丸・新青丸や、JAMSTECの調査船を使っての海洋調査に携わっています(図10)。研究航海で採取された海底表層のコアや、しんかい6500・ハイパードルフィンなどの潜航で得られる岩石試料を用いて、沈み込み帯の断層活動と海底表層の擾乱とのリンクを探っています。また、大気海洋研究所に新しく導入される可搬式マルチチャンネル反射法地震探査装置を用いて、広く沈み込み帯の地下構造探査に携わる予定です。



図10 学術研究船淡青丸(2012年度で引退)でのコア採取



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