概要計画MOWALL-CIRMOWALL-BAB(SB/PVB)MOWALL-SS(Vulcan)成果MembersLink

 

 MOWALL計画の初戦となるターゲットはパレスベラ海盆中軸部です.ここでは,トランスフォーム断層沿いに海洋コアコンプレックス(Ocean Core Complex, OCC)および平滑海底(Smooth Seafloor, SS)が存在することがわかっています.OCCは海嶺軸部でのメルト供給量が減少した際にデタッチメント断層に沿って地殻深部・上部マントル物質が露出する構造であり, SSはメルト供給がほとんどない場合に出現すると数値実験から予想されています.MOWALL-PVBでは,OCCとSSが形成される前・形成中・形成直後の海洋性地殻断面を, 隣接するトランスフォーム断層崖に沿った潜航調査により観察・試料採取し,大きなメルト供給量変動の実態を明らかにすることを目指しました.が,2018年の航海が,悪天候のためにパレスベラ海盆に到達できず,ターゲットは四国海盆南端部のOCCに変更を余儀なくされMOWALL-SBとなりました.この海域には残念ながらSSはありませんが,OCCが複数見られます.そのうちひとつをMado Megamullionと命名し,背弧拡大最末期の構造として,2019, 2020年度も連続して調査を実施しました.論文成果も続々(成果ページ参照).2021-2023年度は,背弧拡大初期の痕跡を残す四国海盆西縁のOCC群にターゲットを移し,MOWALL-BABして背弧拡大の開始〜終焉の時間変化を追っています.

 

 四国海盆(SB)は,古伊豆弧を割って拡大した背弧海盆で,拡大後期にはNNE-SSW方向の拡大をしたと考えられています.拡大後期には拡大軸は細かくセグメント化しましたが,セグメント間のトランスフォーム断層はパレスベラリフトほど明瞭ではありません.海盆全体としては15Maに拡大を停止し,その後に最後の拡大軸部を中心にpost-spreading volcanismが起こって紀南海山列と呼ばれる海山が形成されました.海盆南端の軸部と九州パラオ海嶺沿い(海盆拡大初期と末期)にのみ,海洋コアコンプレックスが見られます.

 この海域で,YK18-07S(よこすか+6K), KH-18-02 (白鳳丸), YK19-04S(よこすか+6K), YK20-18S(よこすか+6K)が実施されました.また,2021年度は九州パラオ海嶺沿いの海盆西縁でYK20-1-06S(よこすか+6K)が実施されました.2022年度航海も応募中です.

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 調査海域の中央に存在するOCCは「窓」としてMado Megamulliionと命名されました.大西洋のよく見られるサイズのOCCで,典型的な畝が認められます.拡大軸をはさんだ対岸は整然としたアビサルヒルが形成されています.また,南東隣のセグメントには拡大方向にかなり長いOCCとおぼしき構造がみられます.また,この2つのOCCの間に位置する軸谷内の高まりからも深部の岩石が得られており,non-transform massifに相当すると考えられます.

 重力探査の結果から,Mado Megamullionでは高い重力異常が観測され,高密度の深部物質が浅所に存在することを示唆しています.また,磁気観測は全磁力とベクトル観測を行いましたが,全磁力異常から磁化強度を推定したところ,Mado Megamullionの部分は対岸の通常の海洋地殻とは異なるパターンを示し,拡大速度が大きく異なるか,もしくは磁化構造そのものが縞状異常モデルで説明できないかの可能性があります.現在,岩石年代の結果と併せて検討中です.

 Mado Megamullion近傍に限って注目すると,高重力異常はドーム状の高まりを越えて広がっている可能性があること,磁化強度は軸部で比較的高く,また斜面崩壊らしき地形の見られる部分で相対的に負となっていることがわかりました

元の計画

 

 パレスベラ海盆(PVB)は,古マリアナ弧を割って拡大した背弧海盆で,拡大後期にはNNE-SSW方向の拡大をしたと考えられています.拡大軸部はパレスベラリフトと呼ばれ,明瞭なトランスフォーム断層によってセグメント化し,およそ9Ma頃まで拡大を続けていたと推定されています.15°N付近には,世界最大のOCCであるGdzilla Megamullionが存在し,またその北のセグメントS3沿いにはSSが広がっています.

 

 Godilla Megamullionはこれまで精力的に研究が行われており,OCCに特徴的な畝状の地形が見られ,その表面にはかんらん岩や斑糲岩が露出しています.既存のかんらん岩試料の分析により,マントルの部分溶融の度合いの指標であるかんらん岩中のスピネルのCr#(=Cr/Al+Crモル比)がOCCの形成期間中にはっきりと変化することが明らかになり,メルト供給量の変動を示唆しています.ただし,これまでの試料は主にOCC表面から得られており,トランスフォーム断層・断裂帯から得たものではありません.また,SSを持つセグメントS3についてはほとんど既存の調査がありません.

 

 MOWALL-PVBとして,よこすか+しんかい6500/ディープトウの潜航調査に応募しました(2017夏).調査の設計としては,セグメントS1/S2境界(Godzillaの北西側)とS2/S3境界を対象に,OCC,SS形成の形成前・形成前期中期後期・終了直後の各ステージにおいて既存試料の欠落している場所・深度で調査を実施するものとしました.各点では,深部6500-4000mを6Kによる肉眼観察+試料採取, 中浅部4000-2000mをYKDTによるカメラ観察+ミニドレッジの組み合わせの調査を行い,鉛直方向もカバーする計画です.
(2018.4) 公募日数50日の狭き門を通過して採択されましたが,潜航数は4です. 現在,乗船チームの編成とあわせて4潜航の場合の戦略(S2/S3に絞るか,2潜航づつとするか)を検討中です.YK18-07S

(2018.6) 悪天候で,館山沖に5日拘束され,パレスベラに行くことを断念,代わりに四国海盆南端部のOCCの調査を行いました(上記)

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